
1966年東京生まれ。ノンフィクション作家。2005年『愛犬王〜平岩米吉伝』で第12回小学館ノンフィクション大賞受賞。ほか著書に『犬部!』、『ゼロ!』、『旅はワン連れ
ビビり犬・マドとタイを歩く』など。最新刊は10月発行の『動物翻訳家〜心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー』
現在は「マド」という愛犬と暮らしている。
1971年大阪生まれ。犬猫と音楽と酒をこよなく愛するフリーランスのライター。
著書に「またね、富士丸。(集英社文庫)」、絵本「明日もいっしょにおきようねー捨て猫でかおのはなし(草思社)」、CDブック「Another Side Of
Music(ワーナー・ミュージック・ジャパン)」などがある。
現在は「大吉」と「福助」の二頭の犬と暮らしている。
BLOG:「Another Days」http://anazawa222.blog13.fc2.com/
- 片野:
- 映画の中で一番印象に残ったのは、どんなシーンですか?
- 穴澤:
- 千葉県の動物愛護センターが映ったじゃないですか、結構最初の方に。福助はあそこに一度入っているんですよ。それを「ちばわん」の一時預かりさんが引きだしてくれたという経緯があるので、「こんなところに入ってたんかぁ」と改めて思いましたね。
- 片野:
- あの集団の大部屋にね。あそこに福ちゃんがいたのかと思うと、胸がギューっとなるでしょ。
- 穴澤:
- なりましたねぇ。あ、でも施設が粗悪な環境だとか職員さんが悪いという意味ではないですよ。
- 片野:
- わかりますよ。
- 穴澤:
- で、保護されたときに余程怖かったのか、施設で職員さんを噛んだそうだし、うちに来たときも最初は抱き上げることすら困難な状態でしたから。
- 片野:
- 今ではその片鱗もないけどね(笑)。
- 穴澤:
- 試写会に行った日に、ちょうどちばわんの代表と副代表もお越しになっていたので終わってから挨拶させてもらいましたけど、はじめてお会いできて直接御礼を言えたので良かったですよ。もしかしたら、福助は「処分」されていたかもしれないわけですからね。
- 片野:
- マドも茨城のセンター出身ですからね。同じような大部屋に入れられていたはずですよ。
- 穴澤:
- あとは、取材時期に震災も挟んでいるじゃないですか。だから災害が起こったとき、自分だったらどうするだろうとかは考えましたね。
- 片野:
- 何か準備とかしています?
- 穴澤:
- マイクロチップを入れました。片野さんの「保健所犬の飼い主になる前に知っておきたいこと(新潮社)」を読んで(笑)。
- 片野:
- あっ、本当に!?
- 穴澤:
- ええ、実際、仙台の動物愛護センターに取材に行ったこともあるんですけど、震災のときに保護されたのって、首輪をしていない犬が多かったそうなんですよ。抜けちゃうみたいで。そのせいで飼い主も無事だったのに、再会するまですごく時間がかかったらしく。だから首輪に名前があっても外れたら意味ないなと。
- 片野:
- そうなんですよね。
- 穴澤:
- 片野さんは何か準備していることってあるんですか?
- 片野:
- 今は環境省でも動物は同伴避難を推奨しているじゃないですか。とはいえ、当分は人間優先になるだろうから、2週間くらい物流が途切れてもなんとか生きていけるよう備蓄はしていますよ。
- 穴澤:
- 何を?
- 片野:
- お水とか、フードとかペットシーツとか。私も震災後に現地を取材したんですが、人用の物資は届いても、犬用のものなんて当分来ないですから。
- 穴澤:
- 僕はほとんど何もしていないですね。というのも、以前に海上自衛隊の元海将の人に取材をしたことがあるんですが、「災害のときに何を備えておくべきですか?」と質問したら「まず生き残ることを考えろ」と言われたんです。「死んだら備蓄なんて意味ないし、生きてさえいたら絶対助けが来るから」と。なるほどなぁと。
- 片野:
- へぇ。
- 穴澤:
- だから家具が倒れてきてこいつらが下敷きにならないようにとか、ガラスが割れないようにとか、そういう対策はしていますよ。ま、それでも備蓄しておいた方がいいにこしたことはないんですが(笑)。
- 片野:
- でも健康な犬はいざとなったら人間用のおにぎりでもあげればいいんです。その点猫や病気治療中のコは備蓄が必要かと。

- 穴澤:
- 片野さんは映画の中で、どんなシーンが印象的でした?
- 片野:
- 私は、お年寄りと施設から引き取った犬たちが、普通に暮らしている老人ホームが出てきたでしょう?あれはすごくいいなと思いました。一般家庭と同じように、犬たちが自由に行動しているじゃないですか、手足の不自由なお年寄りのベッドに犬が平気で乗っかったり(笑)。めちゃめちゃなんだけど、乗られているご本人も嬉しそうで。
- 穴澤:
- あれはいいシーンですよね。
- 片野:
- なんかちょっと羨ましいなぁと。自分も歳をとったらああいう施設に入って犬たちと戯れながら生活したいなと思いましたもん。あの施設って、全国から視察が殺到しているそうですよ。
- 穴澤:
- それはいいことですよね。
- 片野:
- ねぇ、みんな視察して、もっと全国に広げて欲しいですよ。
- 穴澤:
- あの老人ホームって、大人気で順番待ちがすごいらしいですね。
- 片野:
- でもなかなか空かないそうですよ。あんなふうに、犬と触れ合ったりしているうちにみんな元気になっちゃうらしくて。
- 穴澤:
- なかなか死なない(笑)。それはなんだかいい話ですよね。
(おわり)