- 穴澤:
- 片野さんは犬と暮らしていくうえで、何か意識していることってあります?
- 片野:
- うーん、どうだろう。私、結構ゆるゆるだから(笑)。さらに夫は私よりも甘々なので。たぶん、駄目飼い主の一種にカテゴライズされるかもしれないと思います。
- 穴澤:
- 実は、僕もわりとゆるいんですよね。
- 片野:
- なんかね、私がタラッとしている人間なのに、犬に言ってどうなるんだみたいなね(笑)。
- 穴澤:
- そうそう、そもそも飼い主が全然しっかりしていないという。
- 片野:
- あまりしつけをきっちりしちゃっても、続かないだろうし。
- 穴澤:
- たまに聞くじゃないですか、「歩くときは必ず犬を右につけて!」とか、なんか軍隊っぽい感じの。
- 片野:
- そう、それって楽しくないですよね。
- 穴澤:
- 富士丸を飼ったときは僕も「ちゃんとしなきゃ」て思って、厳しくしたこともあったんですが、基本的なことさえ出来ていれば別にいいんじゃないかと思うようになって、大吉なんかは「待て」は何かあったときのために覚えてもらいましたけど、あとは「お手」すら教えていませんから。
- 片野:
- 私も人に迷惑をかけなければそれでいいかなと。あとは最低限健康に気をつけて、食べさせちゃいけないものを与えないとか。それができていれば、普段はのびのび暮らしていた方がお互い心地いいでしょ。
- 穴澤:
- 僕も、もちろん駄目なことは駄目だと言うんですが、心の中では「そのうち落ち着くだろう」と思っているんですよね。福ちゃんも破壊がすごかったんですが、一歳を過ぎた頃から自然と収まりましたし。これは富士丸との経験があったからですが、若いときは多少やんちゃしてもしょうがないんですよ、馬鹿で力が有り余っているんだから(笑)。
- 片野:
- あと、犬と暮らすと、自分の将来も結構考えますよね。普通だったら、10年後の自分がどうなっているかなんて、日常であまり考えないでしょ。
- 穴澤:
- 考えないです(笑)。でも犬がいると「俺はこの先ちゃんとこいつらを食わせていけるのか」とかよく思います。
- 片野:
- 私もほぼその日暮らしみたな感じですから(笑)。だけど犬と暮らしていると、自分プラス世話をしなくちゃいけないから、経済的にも体力的にも、いろいろ考えますよね。
- 穴澤:
- 制約も多いし。僕なんて昼に打ち合わせがあって、たまたまその日の夜に飲みの予定が入っていたりすると、散歩のために一回家に帰ったりしますし。何があっても夕方には一旦帰る、みたいな(笑)。でも別に全然それが苦だとは思わないし、むしろ生活に張りが出るような。
- 片野:
- だから私は犬を飼っている人は全員信用できるとまでは言わないけれども、でも「あぁ、この人も雨の日に犬のウンコを拾っているのかぁ」て思うと、なんかちょっと信用できるような気がするんです(笑)。
(つづく)
1966年東京生まれ。ノンフィクション作家。2005年『愛犬王〜平岩米吉伝』で第12回小学館ノンフィクション大賞受賞。ほか著書に『犬部!』、『ゼロ!』、『旅はワン連れ
ビビり犬・マドとタイを歩く』など。最新刊は10月発行の『動物翻訳家〜心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー』
現在は「マド」という愛犬と暮らしている。
1971年大阪生まれ。犬猫と音楽と酒をこよなく愛するフリーランスのライター。
著書に「またね、富士丸。(集英社文庫)」、絵本「明日もいっしょにおきようねー捨て猫でかおのはなし(草思社)」、CDブック「Another Side Of
Music(ワーナー・ミュージック・ジャパン)」などがある。
現在は「大吉」と「福助」の二頭の犬と暮らしている。
BLOG:「Another Days」http://anazawa222.blog13.fc2.com/